学習の優先順位

まだ、創立記念日に中学校がお休みだった頃のことです。

 ある秋の日の夕方、塾の電話が鳴りました。出てみると中2の生徒(三沢中の生徒ではありません)からでした。

「先生、今日、創立記念日だったからディズニーランドにいます。最後までいたいから塾を休みたいんです。」(本来は生徒本人からの欠席連絡は安全上受けません)

10人ほどのグループで遊びに行っているそうです。そのうちの3人が塾生です。

塾長が「遊びのために塾を休む。それはおかしいと思わないか。それでも休むというのなら勝手にしなさい。」と言って電話を切りました。

 中2の授業が始まる直前に3人のうち2人が塾に駆けこんできました。

電話を切ってすぐにディズニーランドを出て、夕ご飯も食べずに授業に来たと、授業後に話してくれました。

「塾長の声が怖かった」「塾に行かないとやばいと思った」そうです。

1人だけは「パレードを見たいから休む」と言い、「帰ろう」と言っても聞かなかったそうです。

 ここが分かれ目でした。

戻ってきた2人はその後、メキメキと実力をつけ、希望以上の高校に進学することができました。

戻ってこなかった生徒はこの2ヶ月後に塾を辞めました。

辞めた生徒のその後を知ることはほとんどないのですが、この生徒には後日談があり、その話をエピソードとして子供たちに話をする度に、空気がどんよりとするくらい、その子は大変な状況になってしまったようです。

 多くの保護者の方は「たかが1日塾を休んだくらいで」と思われると思います。

確かに、塾を休んだこと自体が悪い訳ではありません。

帰って来た生徒と来なかった生徒の大きな差は「学習」と「遊び」を天びんにかけた時に重みがどちらに傾いたかというところにあるのです。

 子どもたちあるいは保護者の方の「学習の優先順位」がどの位置にあるのかが、分かれ目です。

 帰ってきた子の保護者の方たちも「塾長が休んでもいいと言ったら、夜までいてもいいけれど、塾長が休むなと言ったら、必ず塾に行きなさい。」と出かける時に声をかけられたそうです。

周囲のお母さん方のこともあって、自分の口から「塾に行け」とは言えないけれど(この気持ち、わかります)「塾長が休んでいい」と言うはずはないと思われたそうです。

 ディズニーランド、楽しいです。子ども達は大好きです。でもそのディズニーランドよりも「学習」を選ぶ、この気持ちが大切なのだと実感しました。